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山口 洋一(やまぐち よういち)
●プロフィール
1965年大阪府生まれ。和光大人文学部卒。
89年株式会社アートディンク入社。
その後独立し、92年有限会社フリップフロップを設立。
07年アートディンクに復帰し、現在はディレクターとして開発に専念。
代表作に『アトラス』、『ネオアトラス』シリーズなど。
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―――山口さんは、当初からゲーム業界をめざしていたのですか?
山口 いいえ。僕は大学で芸術学科に籍を置いていたということもあって、もともとはデザイナー志望だったんです。アートディンクに入社したのも、偶然というか、出会い頭というか……
―――と申しますと?
山口 当時就職活動のかたわら、X68000というパソコンを使って趣味でCGを作ってたりしてたんですが、だんだんはまっていくに連れて志望職種もデザイナーからCGクリエイターに変わっていったんです。で、CGクリエイターになるにはどうしたらいいだろうかと考えて……当時は今と違ってCGなんてメジャーじゃなかったし、情報も少なかった。だから、「とりあえず、めぼしいところを片っ端からあたってやれ」ということで、手持ちのゲームやCGソフトのメーカーをリストアップして、最初に電話したのが……
―――アートディンクだった、と?
山口 はい。でも、アイウエオ順でアートディンクから電話したというわけではないんですよ(笑)。たまたま僕が持っていたアートディンクのゲームは『ハウメニロボット』だったんですが、これがまた今までに見たこともないようなユニークなゲームでして……。とにかくすごく印象深かった。こんなゲーム、いったいどんな人たちが作ったんだろうって。だから、ついリストの一番上に書いてしまったんですね(笑)。
―――なるほど。で、応募したら見事採用された、と。
山口 だったらよかったんですが……世の中そんなに甘くはありません。当時のアートディンクはまだ設立2、3年目の頃だったんですが、実は……新卒採用はやってなかったんです。ということで、応募すらできませんでした(笑)。ただ、僕の方も正直なところ就職先としてというより、アートディンクという会社そのものへの興味の方が強かったんで、思わず電話口で言ってしまったんです―――「よかったら、バイトさせてもらえませんか?」って。
―――そうしたら?
山口 バイトということなら一度面接においでよってことになって。で、面接に行ったら運良く採用してもらえて……結局その日から大学卒業まで半年間バイトしました。もう就職活動なんかそっちのけで(笑)。真面目に働いた甲斐あってか、卒業と同時に晴れて正社員として採用されました。
―――アートディンクの新卒社員第1号の誕生ですね。
山口 何というか、まあ……結果オーライでしたね(笑)。
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―――新入社員時代はいかがでした?
山口 毎日とても楽しかったですよ。念願のグラフィッカーになれましたし。それに当時のアートディンクは本当に小さな会社だったんで、グラフィックだけじゃなく、プログラムの仕事もしました。この時の経験が、後々大いに役立ちましたね。
―――山口さんの出世作、『アトラス』を作ることになったきっかけは?
山口 ある時、開発スタッフ全員で企画会議をやろうじゃないかということになって、企画書を作って順にプレゼンしたんですね。そこで一番評価が高かったのが、僕の『東インド会社』だったんです。
―――『東インド会社』?
山口 後の『アトラス』です。最初は『東インド会社』っていってたんですよ(笑)。僕はアンティークマップの醸し出す雰囲気が大好きで、何とかこれをゲームにできないかって考えてたんです。で、あれこれ考えるうちに、プレイヤー自身が地図を描くのではなく、<派遣した探険船がもたらす報告によって世界地図が描かれていく>という企画にまとまったわけです。で、運良く会社の方から商品化のゴーサインをもらいました。
―――それにしても、入社2年目にして自分の企画を自分でディレクションするなんて、すごいですね。
山口 まあ、ディレクターというと聞えはいいんですが……最初はスタッフは僕ひとりだったんですよ(笑)。だから、ディレクター兼メインプログラマー兼メイングラフィッカー……。我ながらすごい肩書きだ(笑)。その後スタッフが増えましたが、実態としては、結局最後までその肩書きのままでした(苦笑)。
―――作り終えてみていかがでした?
山口 自分の作品を作ったんだという達成感を味わう一方、この作品が本当にユーザーに受け入れられるかというプレッシャーも強く感じました。正直不安でたまりませんでしたが、サンプルを渡した某雑誌の編集部から「スタッフがみんな『アトラス』にハマってる」という連絡をもらって……。その時はじめて、こりゃひょっとしたらいけるんじゃないか、という気になりました。
―――そして見事ヒットにつながりました。初監督で初ヒット、おめでとうございます。
山口 ありがとうございます。経験のなさを若さで押し切れる、良い時代でしたね(笑)。
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―――ところが翌年、山口さんはアートディンクをやめてしまい、CG制作会社を経て、自分の会社を興して独立されるわけです。
山口 いや、ただただ若気の至りというか……(苦笑)。「最先端のCGを極めたい!」と大見得切ってCG制作会社に転職したわけなんですが、CG制作をやっているうちにやっぱりゲーム作りの方が僕にとってクリエイティブだということが再認識できて……。「ええい、ゲーム業界に戻ろう!」と(苦笑)。さらに勢いで、自分の会社を作っちゃいました。何というか……わがままを若さで押し切れる、やはり良い時代だったんですね(笑)。
―――今度は外部のパートナーという立場で、アートディンクと向き合うことになりました。外から見たアートディンクはいかがでしたか?
山口 実に良い会社でした、いや、良い会社です(笑)。何タイトルかいっしょに仕事をさせてもらいましたが、いつも気持ち良く仕事ができました。おかげさまで、『ネオアトラス』はユーザーの方から高い評価をいただきましたし、そこそこヒットもしましたし。
―――アートディンク以外の会社とのお付き合いもされたわけですが、比較してみていかがですか?
山口 それこそ業界最大手の会社から、全社員で数名レベルの小さな会社まで、いろいろとおつきあいさせてもらいました。会社ごとに流儀が違って面白かったし、いろいろと勉強になりました。たしかに大手は環境がいいし、優秀なスタッフも大勢いるんですが……だからといって、アートディンクがまったく歯が立たないかというと、そうでもないような気がします。
―――本当ですか(笑)。その理由は?
山口 何ていったら良いんでしょうね……アートディンクは、モノ作りに対する価値観というか、志というか……気障な言い方をすれば、「アイデンティティ」みたいなものがしっかりしているように感じます。ファンダメンタルな部分がしっかりしてるから、良い作品を生み出すポテンシャルという点では、大手に引けは取らない気がします。
―――なるほど。
山口 振り返れば、その「アイデンティティ」は、僕が最初に入社した当時からすでにあったように思います。おそらく、永浜社長とその仲間がアートディンクを興した時からあって……それが連綿と受け継がれ、着実に根付いてきたんじゃないでしょうか。単なる社風というのとは少し違って、もっと深層的というか……例えるなら、一種のDNAみたいなものですかね。社員の体の中にいつのまにか刷り込まれていて、目に見えないパワーを与えてくれる……。「外」からアートディンクとそのメンバーに接して、また他社と比較することで、そのことを強く感じました。
―――うーん、ロマンチックだなあ(笑)。じゃあ、私の中にもそのDNAがあるわけだ。
山口 まあ……それについてはノ−コメントということで(笑)。
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―――その後紆余曲折あって、昨年アートディンクに復帰されました。
山口 15年ほど寄り道しちゃいましたが、無事帰ってまいりました(笑)。わがままを言って飛び出した手前、受け入れてもらえるかどうか不安でしたが、永浜社長にも、スタッフのみんなにも温かく迎え入れてもらえて、ホント感謝しています。
―――当社はいったん辞めても、また戻って来る人が結構いますから。
山口 そうみたいですね。懐の深い会社で助かりました。そんな大らかなところもアートディンクの魅力のひとつですね。別に入れてもらったから言うんじゃないですが(笑)。
―――アートディンク復帰を決意された理由は何だったのでしょう?
山口 やはり、良い仕事をしたい、面白いゲームを作りたい、ということに尽きると思います。僕はこの15年間ずっと「外」にいて、いろんな会社と付き合い、多くのスタッフと仕事をしてきました。その中でつくづく感じたことは、良い仕事をするためには、良い「場」に身を置かなくてはならないということです。「場」というのは、単なる開発環境という意味ではありません。設備や共に働くスタッフの技術力もさることながら、彼らの価値観やプライド、志……さらには彼ら(社員)に対する組織(会社)のスタンスとか……。そういったものを全部ひっくるめて僕は「場」と呼んでいるんですが、アートディンクが僕にとってベストの「場」だということに、15年かけてようやく気づいたんです。
―――つまり、さきほど話題に上った、当社の「アイデンティティ」が、山口さんにとっての魅力的な「場」につながると?
山口 その通りです。「アイデンティティ」というと、大げさに聞えるかもしれませんが、要するに「個性」です。「個性」は、一朝一夕には得られません。長い年月をかけ、高い志をもってモノ作りに励んできた結果、育まれたものだと思います。アートディンクの「個性」とは、今の僕にとって何物にも替え難い魅力的なものなんです。
―――正直、中にいるとよくわかりません(笑)。良きにつけ悪しきにつけ、「アートディンクらしい」という評価はよくいただきますが。
山口 まあ、DNAですから……目に見えるものではないし(笑)。意識しなくても、作品だとかパートナーシップとかいった形を通して、自ずと相手に伝わるんじゃないでしょうかね。
―――じゃあ、そういうことにしておきます(笑)。最後に、山口さんの今後の抱負について聞かせてください。
山口 無論、納得のいく良い仕事をするだけです。とりあえず、現在担当しているプロジェクトで、きちんと結果を出したいと思います。クオリティの面でも、セールスの面でも。帰ってきた「1号」としては、後輩(?)の手前、恥ずかしい仕事はできませんよ(笑)。それと、せっかく「外」で武者修行をしてきた人間がもどってきたのですから、その経験をいかして、アートディンクの「アイデンティティ」をさらにパワーアップさせたいですね。アートディンクはもっと強い会社になれるはずです。そのために精一杯がんばりますので、よろしくお願いします!
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